
格安のストレージは多くの形で恩恵となっているが、同時に悪夢にもなりうるのではないだろうか? これが、Viktor Mayer-Schonberger氏の著書、『Delete: The Virtue of Forgetting in the Digital Age』[「削除:デジタル時代における忘却の美徳」、Princeton UP、2009年9月発売]の主張だ。
この本の結論はシンプルだ。「技術によって、今では情報に対するデフォルトのアプローチは“覚えておくこと”になっているが、それによって、大事な“忘れやすさ”が時代遅れなものになる恐れがある」
本当に「完全な記憶」というものは、呪いになりうる。Mayer-Schonberger氏は本の中で、カリフォルニアのA.J.と呼ばれる41歳の女性を紹介している。
彼女は脳に障害があり、それによって「完全な記憶」能力を持つようになったらしい。「彼女は11歳の頃から、朝食に何を食べたかを正確に覚えており、それを30年間さかのぼることができる。誰がいつ電話をかけてきたか、見ていたテレビ番組のそれぞれの回で何があったかを、1980年代のことでも思い出すことができる……すばらしい才能を与えられた代わりに、決断したり、先に進んだりするA.J.の能力は、たびたび自分の記憶に縛られている」